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壁掛け花瓶「雲」
どんな花瓶を壁にかける?
この問いを考えると「どんな壁にしたいか」から、「どんな部屋で暮らしたいか」となる。
ほのぼのとした雲が浮かぶような部屋にしたいと考えた。
それにしても、部屋にいながら雲の下にいたいと思うのはなぜだろうか。
「自分だけの占有的・閉鎖的な空間」と、「解放された空間(外、自然界)」そのどちらも魅力的な場所なのだろう。
制作開始:2020年 8月 9日
完成 :2020年 8月12日
素材 :粘土、木、ガラス、レジン、針金
外と内。2つを隔てる壁。
「部屋に花を飾る」という行為は、外にある自然からその一部を切り取って、部屋の内側に持ってくるという行為ーというようにも捉えられる。
外と中、自然と人工、世界と自分を区切り、隔てている「壁」。
壁は境界である。
壁掛けの花瓶は、境界線上に存在することになる。
ということは、花瓶には外と内の2つの領域を混ぜ合わせたり、領域の区切りを曖昧にする役割があるのかもしれない。
Photo by Will Francis on Unsplash
花を飾るのは何故か
「部屋に花を飾ろう」というのは、「自然に近づけよう」「自然を感じよう」という志向と等しいと思う。もし本当にそう思って、シンプルに自然に対する欲求を叶えたいならば、自分が外に行けば良い。外で暮らせば良いとも言える。
しかし外で過ごすのではなく、自分の過ごす外とは区切られた自分の領域に、花を持ってくる。その根元には、自然を自分のものにしたい、自分の空間を良いものにしたいという自己中心的な欲求があるのかもしれない。外に生きている花を、その花の寿命を縮めることを厭わずに、持ってきて、自分のものにして、飾るのである。
こう考えると、花を飾る行為は、少しばかり自己中心的なもので、消費行動のようにも感じてしまう。しかし実際は、より良く暮らしたい・より気持ちよく美しく過ごしたいということが頭にあるだけで、自然に対しても誰かに対しても、悪気はない。
つまり草花は、「どこにどうあろうと、癒してくれるモノ、価値のあるもの」として認識されているのである。それゆえに、草花は外と内を行き来できる存在なのかもしれない。みんなのものでもあり、自分のものにしても良い。存在してそこにあることに価値がある。いくら鑑賞されても減らないし、誰に見られても良い。人にプレゼントすることもできる、何もしなくてもいずれ枯れてなくなってしまう。
「花を飾る」のはなぜか。外(や他者)と内(自分)の境界をつなぐためー これもひとつの答えかもしれない。
外と内、自然と人工の境界の関係を考えさせる作品となった。