Story 4. Inside

English version : Story 4. Inside

円形の置き花瓶 [Inside]
円弧の内側に花を挿す箇所が複数あり、草花を配置できる。

「壁・床との分離」から「空間の分離」へ

前作[Independ]は、壁面・床面から分離して独立した生命として成り立つ「種」をモチーフとしていた。
今作の[Inside]は、「分離」の考えをさらに進めて、「空間の分離」をコンセプトにした花瓶。

一般に、花瓶は「部屋に花を持ち込むための装置」と解釈できる。
花瓶がその空間の雰囲気・印象を変える。

この[Inside]は、花を花瓶の内側の空間に生けるようにした。
部屋の空間と花瓶内の閉じられた空間とを分離している。
部屋に花を生けるのではなく、花が生けられた空間を部屋に置くというコンセプト。

空間の中心点を花瓶の中にずらしている。

「空間の中心点」とは、「どこを物事の中心として見るか」ということ。
例えば、私達は普通は「私は地球上に存在していて、私の周りの空気に包まれている。」と思っているはずだ。
しかし、もし全宇宙・世界の中心が自分の胃の中にあるとしたら、「自分の胃を裏返した形で、”自分の体”が全宇宙のすべてを包んでいる」と考えることができる。

花瓶の内側の空間は、草花だけが存在するだけとなる。
そのほかに何もない、究極的に純粋な空間である。

内と外を分けて世界を理解する

自分の中にあるものは、外界とは分離して持つことができる。

例えば、老人が公園で静かに座っていたとする。側から彼を見て、「暇そうだな。何もすることがないのかな。」と思う人がいるかもしれない。その見た目に反して実は、彼の頭の中では次々にアイディアを考え、目まぐるしく思考が巡っているかもしれない。

例えば、学校のクラスで「大人しい子」と周りから思われている少女が、誰よりも冒険的な夢や計画を持っているかもしれない。

もし、外と内の価値観がずれていた時に、何が「正しいもの」と決められるだろうか。決められない。
「分けられた内側の世界(空間)」は、すべてのことから独立しているーと考えてもいいかもしれない。

花瓶の中の世界をどう作るか、それを部屋に置いて、外側から見た時にどう見えるか。
彼/彼女の中にある、あの美しさはなんだろうか。

自分の中には何かあるだろうか。

そんなことを考えながら、花瓶の円弧をやさしく磨いた。