Story 6. Reaction

English version : Story 6. Reaction

水面を歪めた形

前作 [Pond]では、水面(現実世界と理想の境界)をテーマにした作品であった。

「池の水面に映った月に飛び込むカエル」に、現状打破・未知への挑戦的なものを目指すキャラクターを投影している。

今作 [Reaction]では、挑戦によって生じる作用(Reaction)を、「境界の変化」つまり水面の形状の変化で表現しようとした。
「Pond のその後」という位置付けとなる。

水面に飛び込んで突き抜けようとするが、水面自体が粘性のあるスライムの様に変化し、なかなか突き抜けられない形。

水面に飛び込んだあとに、水中に気泡が生まれた形。

水面に生じた波紋の共鳴により、力を加えたところではない場所に、変化が現れる形。

挑戦に対する結果・作用・フィードバック

何かを目指して、何かを変えようと、一生懸命挑戦してみる。

すると、頭の中にあった理想のイメージは実現し、現実のものとなる。
全部が思い通りに実現することもあれば、一部だけの場合もある。

または、いくら挑戦しても現状を変えられずに、なんの変化も起きないこともある。

もし意図通りの変化を起こせなかったとしても、諦めずにやり続けることで何かを得られることもある。


挑戦したことによって、自分が思いもしていなかった変化やフィードバックが起きる。

自分が想像していた結果とは異なったとしも、それ以上のものを得られることがある。

何かに挑戦することは、無駄になることはない。

水面の先にある未知の領域へ飛び込んで、そこで生まれるもの、そのすべてを肯定的に受け入れたい。

前作[Pond(池)]で考えた通り、鑑賞者は「水」から「時間の流れ」を感じとる。
今作では、本来形の定まらない水を固定しているので、氷のように見える。

実際にこの花瓶は、氷ではなく、溶けないし、形は変わらない。
時を止めて、水に何かが入った一瞬を捉えたように見える作品になったと思う。

失敗しても諦めない

今回の花瓶は、粘土とシリコンで鋳型を作り、そこにレジンを流し込んで制作している。

しかし鋳型の造りが甘く、レジンが鋳型から漏れてしまい、意図しない気泡が発生したり、レジンの量が足りなくなるトラブルが起きてしまった。

ゴミ同然のレジンの塊が出来てしまった。

そこで、私は完成を諦めて作り直すべきかどうか迷ったが、私の貧乏根性によりその塊を捨てられず、なんとか形になるように工夫をして完成させることにした。(いわゆる、巨匠は「ええぃ!これじゃいかん」と放り投げるくらいのこだわりを持っているのだろうけども、私は材料の費用と、そこまでにかけた大量の時間を無駄にできなかった。)

想定の形とは異なるものができたが、気泡が溢れ出ている感じなど、想定していなかった良い効果が得られたと思う。

今作のテーマである「挑戦とその作用」を体現した作品になった。